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【国公立志望者向け】2023年共通テスト国語で最も正答率が低かった問題(正答率16.33%)―古文問1の語句解釈「かへすがへすも」

2023年 共通テスト 最難問シリーズ 国語 古文
※イメージです。
※イメージです。

2023年度 大学入学共通テスト 最低正答率問題

国語

最低正答率問題と正答率

第三問(古文)問1 ウ 23  正答率16.33%

国語の平均正答率は54.48%

(参考)2,3番目に低い正答率の問題

第4問(漢文) 問3 33  (正答率20.62%

第4問(漢文) 問1 ウ 31  (正答率21.14

大学入試センターの公表データ

問題区分=本試験人数=445358平均正答率=0.5448  
科目=国語総平均点=105.74   
大問解答番号平均点配点得点率正答率
1合計31.099500.6220.6514
111.78720.89350.8935
121.48120.74070.7407
131.78220.89080.8908
141.23920.61940.6194
151.12220.56120.5612
164.87970.6970.697
174.98170.71150.7115
183.2970.470.47
193.74670.53510.5351
1101.69340.42320.4232
1112.92940.73240.7324
1122.1740.54250.5425
2合計31.114500.62230.6229
2133.49350.69870.6987
2144.85760.80960.8096
2153.54360.59050.5905
2163.29460.5490.549
2173.55370.50760.5076
2186.00370.85750.8575
2192.54460.4240.424
2203.82770.54670.5467
3合計21.867500.43730.4215
3211.74150.34820.3482
3221.7850.3560.356
3230.81750.16330.1633
3243.04970.43550.4355
3252.75770.39380.3938
3263.16870.45260.4526
3274.25570.60790.6079
3284.370.61430.6143
4合計21.657500.43310.4427
4291.9240.480.48
4302.65540.66380.6638
4310.84640.21140.2114
4323.47560.57920.5792
4331.44370.20620.2062
4343.39260.56530.5653
4351.86150.37210.3721
4363.55660.59270.5927
4372.50980.31360.3136
引用元

令和5年度 大学入学共通テスト問題評価・分析委員会報告書 | 独立行政法人 大学入試センター (dnc.ac.jp) 

令和5年度 試験情報データ(本試験) | 独立行政法人 大学入試センター (dnc.ac.jp)

01_設問別得点率及び正答率表(令和5年度大学入学共通テスト本試験__全教科・科目)(37.5 KB)

※イメージです。

2023共テ国語の最低正答率問題の分析

問題指示文と選択肢

問1 傍線部(ア)~(ウ)の解釈として最も適当なものを、次の各群の①~⑤のうちから、それぞれ一つずつ選べ。解答番号は 21 ~ 23 。

(ウ) かへすがへすも  23 

  • ① 繰り返すのも
  • ② どう考えても
  • ③ 句を返すのも
  • ④ 引き返すのも
  • ⑤ 話し合うのも

定番の語句解釈問題でした。

本文の該当箇所

出典

源俊頼『俊頼髄脳』

本文

(第4段落―※太字が傍線箇所)

 人々、これを聞きて、船々に聞かせて、付けむとしけるが遅かりければ、船を漕ぐともなくて、やうやう築島をめぐりて、一めぐりの程に、付けて言はむとしけるに、え付けざりければ、むなしく過ぎにけり。「いかに」「遅し」と、たがひに船々あらそひて、二めぐりになりにけり。なほ、え付けざりければ、船を漕がで、島のかくれにて、「(ウ)かへすがへすもわろきことなり、これを今まで付けぬは。日はみな暮れぬ。いかがせむずる」と、今は、付けむの心はなくて、付けでやみなむことを嘆く程に、何事も覚えずなりぬ。

文脈

(1~3段落)貴族たちが集まり舟遊びをしている。殿上人の旧知であった歌僧の良暹法師に人々は連歌を促す。良暹は詠んだ発句をそばの僧を介して人々に伝える。

(当該4段落)しかしながら、人々は誰一人付け句をすることができず、時がむなしく過ぎるばかりである。

解法/正答の根拠

語彙力―この単語知識があれば迷わずに正答できた!

一つの可能性として、次の本文に出合って語彙レベルの細部まで精読できていれば、比較的迷うことなく正答を選べていたかもしれません。

引用の太字は、以下全て灘ゼミに拠ります。

「この国に生れぬるとならば、嘆かせたてまつらぬほどまで侍らん。過ぎ別れぬること、かへすがへす本意なくこそおぼえはべれ。」

意訳:(かぐや姫から翁・媼への置手紙の文面)この国に生まれたとするならば、翁・媼をお嘆かせしないほどにまでお仕えするつもりです。しかし、ともに居られる期間が過ぎ別れてしまうことは、どう考えても(≒本当に)、不本意です。

『竹取物語』かぐや姫の昇天

一部の教科書にも採用されていて、『竹取物語』のかぐや姫の昇天の場面として有名な章段の抜粋です。

ただ、この「返す返す」一単語をクローズアップして読むことはしないでしょうから、出合っていたとしても覚えていないとか、読み流されてしまう可能性が高いかもしれません。

他に、当該本文「かへすがへすも、わろきことなり」と類似の用例として次の『十訓抄』も参考になります。

「汝はいかでか、わが前にてかかることをば申すぞ。…… 汝が父、ねむごろにこれを営みて、久しくなりぬ。かたがた、いかでかをこづくべき。かへすがへす不当のことなり」

意訳:お前はどうして、私の前でこのようなことを言うのか。お前の父は丁重に柿本人麻呂の御影供を営んで、長く経つ。あれやこれやと、どうして悪口をいうことができるのか。どう考えても(≒本当に)道理に合わないことだ。

『十訓抄』上 四ノ二

「かへすがへす」が副詞として、また「どう考えても」や強調するニュアンスで「本当に」と解釈しうる例です。

これらの用例に触れていれば、①③④⑤の選択肢には迷わされにくく、②を選び易かったでしょう。

とはいえ、この正答率から多くの受験生にはこの知識がなかったことが推察されます。

「かへすがへす」の語義が問われている入試過去問は、「2015年 関西外国語大学 2/9,前期日程(一般)」(出典『風姿花伝』)に1例見られます。(Xam国語2012~2023を独自調査)

しかし、絶対難攻不落の問題ではありません。この問題は知識を拠り所とするのではなく、以下のように文意・文脈を解釈し、選択肢を丁寧に吟味することでも解けます。

読解力―文意・文脈と選択肢の吟味

①傍線部と前後の文脈

まず、傍線部ウを含む一文全体を解釈をします。

かへすがへすもわろきことなり、これを今まで付けぬは。」

ざっくりとした解釈では、「「かへすがへすも」良くないことだ、良暹が詠んだ句に未だ句をつけられていないことは。」となります。

倒置文であることを踏まえ、通常の文に戻すと、「良暹が詠んだ発句に付け句をできていないことは、〈かへすがへすも〉良くない」となります。そこで文意・文脈上、最も自然に前後とつながる選択肢を判断します。

②選択肢の吟味

次に、選択肢の吟味に移ります。傍線部に各選択肢を代入してみます。

①良暹の発句に今まで句をつけられていないことは、〈繰り返すのも〉良くない。×

まず何を繰り返すのか、目的語が不明瞭で不自然です。直前に船が(付け句をひらめく時間を稼ぐために)全く櫂を漕がない遅い速度で築島を一めぐり、二めぐりをしていますが、無理やりその解釈をここに当てはめると、「築島をめぐることを繰り返すことも」となりそうですが、「これを今まで付けぬは」との文の構成的に整合性がとれません。あくまで述語の「良くない」の主部は「良暹の発句に今まで句をつけられていないこと」ですから、その間に更に「(繰り返す)ことも」を付け加えると不自然な文となってしまいます(一万歩譲って仮にその文意を表したいとしても、わざわざ伝わりにくい「かへすがへすも」を使わずもっと伝わりやすい表現にするのではと考えられると、消去しやすいと思います)。

選択肢①が目的語を伴っていない他動詞で、その目的語が不明瞭である文意の点、さらに選択肢①全体が名詞節になっていて文構成上の整合が取れない点の2点、いずれをとっても不正解の理由となりえそうです。一つの不自然さでは決断が躊躇されても、合わせ技で不自然さが増して×と判断したくなります。

②良暹が詠んだ発句に付け句をできていないことは、〈どう考えても〉良くない。

〈どう考えても〉とは、あらゆることを考慮した上でと解され、詠まれた発句に付け句を長時間かかっても付けられないのは、どのような条件を考慮したとしても弁解の余地なく良くないことと考えられ(そうである)から(後段に「付けでやみなむことを嘆く程に」とあり、嘆くべきことであるのは明らかです)、文脈上の不自然さはなく、妥当な解釈と考えられます。よって。文法的にも、もとの「かへすがへすも」が副詞(句)であったのに対し、「どう考えても」は副詞節であるから、交換可能である点もです。

③良暹が詠んだ発句に付け句をできていないことは、〈句を返すのも〉良くない。×

本来連歌は句を返すべき、そういう文芸だから、それを良くないというのは、それ一点のみでも無理筋です。また、上記①での解説同様、「……ことは、〈X〉よくない」というすでに主語ー述語の文構造が成立している文において、「句を返すのも」という名詞節をさらに加えることは、不自然に主語が二つあることとなり不適当です。×

④良暹が詠んだ発句に付け句をできていないことは、〈引き返すのも〉良くない。×

上の①、③同様、「……ことは、〈X〉良くすのも」という名詞節をさらに加えることは、不自然に主語が二つあることとなり不適当です。(前者は主題の提示で主語ではなく、後者が主語だと考えるとより複雑になるだけで、意味上不自然極まりないので考慮するだけ時間の無駄です)。また、文意においては「引き返す」は現代語としては「元の所にもどる」という意味ですから、「元の所に戻る」ということが良くないという解釈が成立するためには、発言者が付け句を行うことを諦めずに最後まで考え抜く姿勢を有していると考られる必要がありますが、後文で、付けようとする気持ちは失せ、何も考えられない状態になっているのとあり、×

⑤良暹が詠んだ発句に付け句をできていないことは、〈話し合うのも〉良くない。×

上の①、③、④同様、「……ことは、〈X〉良くない」というすでに主語ー述語の文構造が成立している文において、「話し合うのも」という名詞節をさらに加えることは、不自然に主語が二つあることとなり不適当です。また、「……ことは」の部分を主語ではなく主題(提題)と考えてみた場合には(それ自体相当考えにくいものの)、主語となる「話し合う」ことが良くないとなり、それが成り立つためには、話し合い・議論に焦点を当てて、議論することが良くないという文脈でなければならないが、積極的にはそのように解釈しうる文脈ではありません(後段5段落に「かく言ひ沙汰する程に」とあり、当該傍線部「かへすがへすも」以降も議論は続いています)。やはり「良くない」のは「付け句をできていないこと」と考えるのが最も妥当です。

更に、傍線部の「かへすがへす」に立ち返ってあえて可能となりそうな筋の解釈を試みたとしても、副詞である古語「かへすがへす」が、コアの意味である「繰り返し繰り返し」から「話し合う」という発話行為の意味を担わされること、また名詞句「話し合うこと」と解釈し得るとは考えにくいです。×

従って、解答は②。

実際の解答プロセス

実際の本番では、時間配分を最大限考慮しながらの解答となるので、直感的に正答にたどり着けるのが、時間の浪費を防ぐ上で理想的です。

避けたいのは、上記の選択肢の吟味のように、わざわざあり得なさそうな筋の妥当性まで検討することです(実際の試験中に確実な実証など不可能です)。とにかく無駄な時間の浪費は、避けるべきです。

結論として、今回は傍線部「かへすがへすも」は副詞(句)であり、選択肢②「どう考えても」のみが副詞節で、残りの①③④⑤はすべて「~のも」という名詞節であるから、前者が自然に置き換え可能であり、正解というのが最短距離でのプロセスのようです。

ただし、そのような文法的判断だけを根拠として解答することは、受験生にとって現実的ではないです。文法用語によってではなく、直感的に両者の本質的な違いを見抜くことが肝心です(この判断が難しい人にとっては、とても難しく思われます)。

そして結局は文脈・文意の自然さ・不自然さと、選択肢の妥当性・蓋然性をも併せて、総合的に考慮するのが現実的です

その他の着眼点

①語の形態

傍線部「かへすがへすも」に対し、選択肢①「くり返すのも」③「句を返すのも」④「引き返すのも」は、傍線部の語の一部を形態として含んでいます。今回は、結果的にそれらはフェイクであったといえます。

受験生にとって難しいのは、「かへすがへすも」という形態の傍線部が、外形上似ても似つかない「どう考えても」という形態の選択肢を意味しているという点です。

しかし、文脈・文意からそうならなければならない場合もあるということを認識しておくことによって、そして表面的な語形のみにとらわれず、文脈・文意を重視することで、より高いレベルの解釈力を身につけることが可能になります。

受験生は、表面的な形態の類似性(部分的な同一性)に惑わされず、文前後の文脈やその語の文内での用いられ方にも注意を払って解釈するトレーニングが有効です。

②辞書的な意味

・現代語の国語辞典

「かえすがえす」は現代語としても存在し使われます。以下は現代語の国語辞典の意味記述です。

①何度も何度もくりかえされるようす。くれぐれも。「―たのむ」

②過ぎたことを何度も考えて、くやむようす。「―も残念だ」

『学研現代新国語辞典改訂第四版

①何度も何度も。くれぐれ。かさねがさね。「―も念をいれる」

どう考えても。まったく。「―も残念だ」

『新潮現代国語辞典第二版

いずれも②に「考える」の語義が含まれていますが、次の『明鏡国語辞典』には、「悔やむ」に焦点を絞り、「考える」は省略されています。つまり、現代語においては、「考える」という行為とともに用いられる用法の印象が薄れているといえるかもしれません。

①過ぎたことを何度も悔やむさま「―(も)残念だ」

②何度も繰り返すさま。「―注意する」

『明鏡国語辞典第二版
・古語辞典

他方、『日本国語大辞典』や『広辞苑』のような大型辞典や、古語辞典では、「どう考えても」の語義は立項されていることが多いようです。

①繰り返し繰り返し。なん度も。再三再四。

どう考えても。なん度考えても。くれぐれも。よくよく。

③ひとえに。ひじょうに。じゅうじゅう。

『日本国語大辞典第二版

①幾度も繰り返して。再三再四。

どう考えても。本当に。

③ねんごろに。ていねいに。

『広辞苑』第七版

①くり返し。何度も。

どう考えても。何度考え直してみても。ほんとうに。まったく。

③ていねいに。念には念を入れて。

『旺文社古語辞典第九版

したがって、古語(辞典)では、「どう考えても」という語義は「かへすがへす」を構成する必須の意味と言えそうです。

『旺文社全訳古語辞典』 第四版では、「①くり返しくり返し。何度も。念入りに。②重ね重ね。つくづく。」のみで、「どう考えても」という語義は立項されていません。

また『新全訳古語辞典』(大修館書店)では、「①繰り返し繰り返し。何度も。②(強く感動して)なんとまあ。重ね重ね。③丁寧に。念を入れて。」とあり、こちらも「どう考えても」という語義は掲出されていません。

正答率が低い理由

古語「かへすがへす」は、古文単語学習で必須の着眼点である「古文特有語」でも、完全な「古今異義語」でもなく、むしろ現代語と大いに重なる意味領域を有し古語と現代語との違いを持たない、いわば歴史的伝統語といえます。

「古文特有語」や「古今異義語」を学習の軸にしている多くの受験生にとっては、古文単語学習で培った語意の知識の拠り所がなく、また傍線部と形態の類似する複数の選択肢に、迷わせられたのではないかと推察します。

結局のところ、本問題はシンプルな語句解釈の問題ながら、語義は文意・文脈の正確な理解のプロセスを通して初めて解釈が可能となるという当たり前の前提を踏まえた読解ができているかの解釈スキルを問う、多くの受験生にとってはハードルの高い問題だったということになります。

(参考)問題作成者(大学入試センター・問題作成部会)の見解

参考として、以下に問題作成者の見解を引用します。そこには「現代語にも文語的に残る語彙」についての言及があります。

問1は,本文の読解に必要な基本的な単語の知識および,内容を理
解する力を問うた。現代語にも文語的に残る語彙についての理解が特に低かった。

引用「令和5年度 問題評価・分析委員会報告書(本試験)」 第3 問題作成部会の見解  2 各問題の出題意図と解答結果 国語 自己評価 令和5年度 問題評価・分析委員会報告書(本試験) | 独立行政法人 大学入試センター (dnc.ac.jp)

この見解は、前年(2022年度、下の引用)と同様なので、「現代語にも文語にも残る語彙」が意図して出題されていることは疑いないようです。

問1は語句解釈の問題で,単語の意味と語法が正しく理解できて
いるかを問うた。現代語にも文語的に残る語彙についての理解が特に低かった。

引用「令和4年度 問題評価・分析委員会報告書(本試験)」 第3 問題作成部会の見解  2 各問題の出題意図と解答結果 国語 自己評価

直近2年のこれらの出題者の出題意図や見解は、他方それ以前の2021年度とは異なっていることが以下の引用から分かります。

問1は語句解釈の問題で,古文に特有の単語の意味と語法が正しく理解できているかを問うた。いずれも平易であったと思われる

引用「令和3年度 問題評価・分析委員会報告書(本試験)」 第3 問題作成部会の見解  2 各問題の出題意図と解答結果 国語

灘ゼミの古文単語学習指針

灘ゼミでは、上記問題作成者の出題意図や見解を踏まえ、今後も「現代語にも文語的に残る語彙」の出題を想定しておくべきという考えの下、従来の「古文特有語」や「古今異義語」、もちろん「多義語」も踏まえつつ、古代から現代まで変わらず使われ続けて残る歴史的伝統語の学習指導もぬかりなく行っていきます。

これは受験対策のみならず、歴史ある古語で現代に生き残る語を消滅させない、言語保護活動とも言いうる有意義な活動たり得ます。

受験生には古文の授業において、日常ではなじみの薄い言葉であっても、古代から現代まで受け継がれている歴史由緒ある言葉に触れ、より多くの語を次代に引き継いでもらいたいと願います。もちろん志望大学合格を優先的に!

※イメージです。

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