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【神戸大学の古典文法問題[直近11か年]】高校1,2年生向け 古典文法は大丈夫と思える! & 高3生の古典文法の最終実践チェック

神戸大学の古文 古典文法問題 直近10か年 高校1,2年生におすすめ&高3生直前30~60分チェック
※イメージです。

神戸大学の国語・古文・古典文法問題 直近11か年

これで古典文法は大丈夫と思える! 神戸大学の古典文法問題

高1,2年生の基礎固めにとても有益です。

古文が苦手な高3生の最終直前チェックに使えます。

2022年 この年は、「ぬ」

指示文

略。出典は『平家物語』。

設問

問六 空欄b~dには、助動詞「ぬ」が入る。それぞれ適切な活用形に直して答えなさい。二箇所ある空欄dには、それぞれ同じものが入る。

本文
  • 女、「いとかたはなり。身もほろび〔 b 〕ん。かくなせそ」と言ひければ、
  • 思ふには忍ぶることぞ負け〔 c 〕ける()ふにしかへばさもあらばあれ
  • 身もいたづらになり〔 d 〕べければ、つひにほろび〔 d 〕べしとて、
灘ゼミ

高1,2年生へのヒント!

まず、直後の助動詞の「接続」のルールを思い出します。推量「む」、過去「けり」、推量「べし」の上は何形でしたか? 次に、助動詞「ぬ」の活用形をそれぞれについて判断します。

2021年 この年は、「けり」

指示文

次の文章は、平重盛について書かれたものである。(以下略)

出典は『平家物語』。

設問

問四 空欄a~cには、助動詞「けり」が入る。適切な活用形に直して答えなさい。

本文
  • ……さて兼康見たりける夢のやうを、始めより終はりまで詳しう語り申し〔 a 〕が、……
  • ……少将にささん」とて、三度受けて、少将にぞさされ〔 b 〕。少将また三度受けたまふとき、……
  • ……幾ほどもなくして、つひに()せたまひけるにこそ、げにもと思ひ知られ〔 c 〕

高1,2年生へのヒント!

a. 接続助詞「が」の接続を思い出す。接助「が」の上は何形?

b. 係助詞「ぞ」の結びは何形? 次に過去「けり」のその活用形は?

c. 係助詞「こそ」の結びは何形? 同上。

2020年 この年は、「らる」の活用形

指示文

次の文章は『讃岐典侍(さぬきのすけ)日記』の一節である。讃岐典侍は堀河天皇(一〇七九~一一〇七)に仕え、天皇の死後はその皇子の鳥羽天皇(一一〇三~一一五六)に仕えた。次の場面には、鳥羽天皇に仕え始めた頃、故堀河天皇のことが思い出されて仕方がない作者の様子が描かれている。(以下略)

設問

問二 空欄(a)~(d)には、助動詞「らる」が入る。適切な活用形に直して答えなさい。

本文
  • ……人々「めづらしき所々見ん」とあれど、具してありかば、いかが物のみ思ひいで (a) ぬべければ、……
  • ……黒戸の小半蔀(はじとみ)の前に植ゑおかせ給ひし前栽(せんざい)、心のままにゆくゆくと生ひて、御春(みはる)有輔(ありすけ)が、
  •   君が植ゑし一むらすすき虫のねのしげき野辺ともなりにけるかな
  • といひけんも思ひいで (b) 
  • ……承香殿(しようきやうでん)を見やるにつけても、思ひいで (c) ば、里につくづくと思ひつづけ給はんとおしはかりて、……
  • ……かくてあるしもぞ、今すこし思ひいで (d) 

高1,2年生へのヒント!

a. 完了の助動詞「ぬ」の接続のルールを思い出します。

b. 上に係助詞「ぞ・なむ・や・か・こそ」がない場合の文末の形(活用形)は?

c. 接続助詞「ば」の上は、仮定条件なら未然形、確定条件なら已然形でした。この文章のこの箇所は、仮定?それとも確定?

d. 上に係助詞「ぞ」がある場合の文末の活用形は?

まずは、助動詞「らる」の活用形を、迷いなく瞬時に思い出せるようになろう。

※イメージです。

2019年 この年は、「せ」

指示文

略。出典は『今昔物語集』。

設問

問二 二重傍線部(a)~(c)の「せ」の文法的な説明として正しいものを次の中から選び、記号で答えなさい。同じものを二回以上選んでもよい。

本文
  • (越中の守藤原為善(ためよし)といひける博士は、子の惟規(のぶのり)に)……後の世のことを思へ」と言ひて、さとりあり、やむごとなかりける僧を枕上に据ゑて、念仏など勧めさ(a)むとしけるに、……
  • 傍らなる人、「もし物書かむなど思すにや」と心得て問ひければ、(惟規は)うなづきければ、筆をぬらして、紙を具して取ら(b)たりければ、かく書きたりけり。
  • 「形見に(c)む」とて置きて、常に見つつ泣きければ、

イ 助動詞「す」の未然形                       ロ 助動詞「す」の連用形

ハ 助動詞「さす」の未然形の一部         ニ 助動詞「さす」の連用形の一部

ホ 動詞「す」の未然形                           ヘ 動詞「す」の連用形

高1,2年生へのヒント!

まずは、助動詞「す」「さす」とサ変動詞「す」の活用をはっきりと覚えてしまおう。さらには、接続のルールも覚えてしまおう。

 使役「す」(下二段型)せ・せ・す・する・すれ・せよ【接続は四・ナ・ラの未然形】

 使役「さす」(下二段型)させ・させ・さす・さする・さすれ・させよ【接続は、四・ナ・ラ以外の未然形】

 サ変動詞「す」(サ変型)せ・し・す・する・すれ・せよ

解法!(答えだけ知りたい人はスキップしてください)

a. 「人物「X」(ここでは惟規)に~させる」という文脈を想定でき、「せ」の上が「さ」になっていることから、助動詞「さす」の「させ」に狙いを定めよう。次にその前の語が、下二段動詞「すすむ(勧む)」(現代語の勧める)の未然形なので、つじつまが合う(=ルール通り)。

b.「人物「X」(ここでも惟規)に~させる」という文脈を想定できる。さらにその前の語が四段動詞「取る」の未然形になっている。したがって……。

c. 単純に「~しよう」という文意に解せるから、「~をする」の意のサ変動詞「す」を疑ってみる。つぎに、直後が推量(意志)の助動詞「む」であり、その「む」は未然形接続のグループに属しているから、つじつまが合う(=ルール通り)。

2018年 この年は、下二段の宝探し!

指示文

略。出典は『源氏物語』澪標巻。

設問

問一 第一段落の最初の一文「さる所に……のたまひ契る」に用いられている下二段活用の動詞(複合動詞は含むが、補助動詞は除く)を、三つすべて終止形に直して記しなさい。

本文

 さる所にはかばかしき人しもありがたからむを(おぼ)して、「故院にさぶらひし宣旨(せんじ)の娘、宮内卿(くないきやう)宰相(さいしやう)にてなくなりにし人の子なりしを、母なども()せて、かすかなる世に経けるが、はかなきさまにて、子生みたり」と聞こしめしつけたるを、知るたよりありて、事のついでにまねび聞こえける人()して、さるべきさまにのたまひ契る。

高1,2年生へのヒント!

まず、下二段活用の動詞の語尾に着目しよう。語尾が次の「e / e / u / uる / uれ / eよ」いずれかになることが、正解の前提となります。

紛らわしくてよく出題される語は、覚えておくと悩まず解けて便利です。

 サ行下二段……「着す・見す・失す・仰す・参らす」など

 →サ行は、サ行四段動詞やサ変動詞と紛らわしいから、注意。

 ワ行下二段……「植う・飢う・据う」

 終止形が一音節の下二段動詞……「得・経・寝」

解法!

最後に、複数の語(辞)から構成されて一つの意味を成すと考えられる語は、複合語として一語に見なされます。

例 思ひ+なる→思ひなる、聞し召す+入る→聞し召し入る

2017年 この年は、「に」

指示文

次の文章は、菅原道真が藤原時平の策略によって左遷された事件(北野の御事)を中心に述べたものである。(以下略)

出典は『愚管抄』。

設問

問二 二重傍線部(a)~(d)の「に」の文法的な説明として正しいものを次の中から選び、記号で答えなさい。同じものを二回以上選んでもよい。

本文
  • ……昭宣公うせ給ひ(a)ければ、……
  • ……天神は疑ひなき観音の化現(けげん)(b)て、末代ざまの王法をま近くまもらんとおぼしめして、かかることはありけりとあらは(c)知ることなり。
  • この御心ならば、全て内覧の臣、摂籙(せつろく)の家は、天神の御かたきにて失はるべきにてこそある(d)やがて時平の弟の貞信公、家を伝へ、内覧摂政あやにくに繁昌して、子孫絶ゆることなく、今までめでたくて過ぎらるることを深く案ずるには、日本国は小国なり、内覧の臣二人併びては一定悪しかるべし、大織冠の御あとを深く守らんとて、時平の讒口にわざといりて御身を失ひて、しかも摂籙の家を守らせ給ふなり。

イ 名詞の一部                                         ロ 形容動詞の活用語尾

ハ 格助詞                                                ニ 接続助詞

ホ 完了の助動詞「ぬ」の連用形             ヘ 断定の助動詞「なり」の連用形

ト 動詞の活用語尾

解法!(簡単に解ける人はスキップしてください)

a. 直前の語の活用形が連用形(四段「給ふ」の連用形)になり、下に連用形接続の助動詞「けり」があることから、その語自身の連用形が「に」である助動詞は? 後ろに過去や完了の助動詞を伴うことが多いです。

b. 主語ー述語の関係の述語となり、英語のBe動詞のように「~である」と解釈される助動詞です。ここでは「天神は、……観音様の化身であって、」と理解されます。

c. 「~やかに」(軽やかに)や、「~かに」(静かに)、「~げに」(をかしげに)などの形が典型ですが、それら以外の「~に」の場合も少なくないです(あはれに、など)。性質・状態を表す品詞です。

d. 体言か活用語の連体形について、前後が順接や逆接などの接続関係を表します。絶対ではないものの直後に読点(、)がある場合も多いです。

2016年 この年は敬語動詞!

指示文

略。出典は『今昔物語集』。

設問

問二 本文中に使われている尊敬語の本動詞四つ終止形で記しなさい。同一の本動詞は、一度挙げるのみでよい。

本文

 今は昔、天竺の僧迦羅国(そうからこく)にひとつの小伽藍(がらん)あり。その寺に等身の仏おはす。この寺は、この国の前天皇の御願なり。仏の御頭には、眉間(みけん)には玉を入れたり。この玉、世にならびなき宝なり。値限りなし。その時に貧しき人ありて、「この仏の眉間の玉限りなき宝なり。もしわれこの玉を取りて、買はむ人に与へたらば、子孫七代まで家楽しく、身豊かにして、貧しき思ひなからむ」。しかるに、この寺に夜半に入らむに、東西を閉ぢて、門戸守る人たゆみなく、たまたまに出入する人をば姓名(しやうみやう)を問ひ、行き所を尋ぬれば、さらにずちなし。しかりといへども、あひかまへて門戸のもとをうがちこぼちてみそかに入りぬ。寄りて仏の御頭の玉を取らむとするほどに、この仏、やうやく高くなり給ひて及び付かれず。盗人高き物踏まへてまた及べども、いよいよ高くなりまさり給ふ。

 しかれば、盗人、「この仏はもとは等身なり。かく高くなりまさり給ふは玉を惜しみ給ふなめり」と思ひて退き、合掌頂礼(がつしやうちやうらい)して仏に申さく、「仏の世に()でて菩薩(ぼさつ)の道を行じ給ひしことは、われら衆生を利益抜済し給はむがためなり。伝へ聞けば、人をすくひ給ふ道にはをもむさぼらず、命をも捨て給ふ。いはゆる一羽の(はと)に身を捨て、七つの虎に命を亡ぼし、眼をくじりて婆羅門(ばらもん)()し、血を出だして婆羅門に飲ましめ、かくのごとくのありがたきことをそら施し給ふ。いかにいはんや、この玉を惜しみ給ふべからず。貧しきをすくひ下賤(げせん)を助け給はむ、ただこれなり。おぼろけにては仏の眉間の玉をば下ろすべしやは。なまじひに生きめぐりて、世間を思ひわびて限りなき罪障を造らむとす。いかでかかく高くなり給ひて頭の玉を惜しみ給ふ。思ひにすでに(たが)ひぬ」と()く哭く申しければ、仏高くなり給ふ心地に頭をたれて盗人の及ぶばかりになり給ひぬ。しかれば、「仏、わが申すことによりて、玉を取れとおぼしめすなりけり」と思ひて、寄りて眉間の玉を取りて出でぬ。夜明けて、寺の内の比丘(びく)どもこれをみて、「仏の眉間の玉は、いかなればなきぞ。盗人の取りてけるなめり」と思ひて求め尋ぬれども、誰人(たれひと)の盗めると知らず。

 その後、この盗人、この玉をもつて市に出でて売るに、この玉を見知れる人ありて、「この玉は、それの寺にまします仏の眉間の玉近ごろ()せたる、これなり」と()ひて、この玉売る者を捕へて、国王に奉りつ。召し問はるる時に、隠さずしてありのままに申国王このことを用ゐ給はずして、かの寺に使ひを遣はして見せしめ給ふ。使ひかの寺に行きて見るに、仏頭をうなだれて立ち給へり。使ひかへりてこの由を申す。国王この由を聞き給ひて、悲しびの心をおこして盗人を召して、値を限らず玉を買ひ取りて、もとの寺の仏に返し奉り給ひて、盗人をばゆるしつ。

 まことに心をいたして念ずる仏の慈悲は、盗人をもあはれび給ふなりけり。その仏、今に至るまでうなだれて立ち給へりとなむ語り伝へたるとや。

高1,2年生へのヒント!

動作主を高め、実質的な意味を有する動詞を探しましょう。ある程度、敬語動詞を学習して覚えていないと難しいかもしれません。

この本文では、「仏」や「国王」の動作を敬うために用いられています。

また、間違えて謙譲語の本動詞を選ぶミスもありがちです。尊敬語と謙譲語を混同しないように、区別する意識を働かせながら覚える必要があります。

2015年 この年は、「けり」

指示文

次の文章は、平治の乱で敗れた源義朝(よしとも)の妻の常葉(ときわ)が、三人の男児を伴って平清盛(きよもり)のもとに出頭した場面である。(以下略)

出典は『平治物語』。

設問

問二 空欄(イ)~(ハ)には、助動詞「けり」の活用形が入る。適切な形に直して答えなさい。

本文
  • 大弐清盛、(のたま) (イ) は、「義朝が子供のこと、私に清盛がはからふべきにあらず。
  • 清盛、「たれもさこそは思へども、おとなしき兵衛佐(ひゃうゑのすけ)を、池殿助けんと申さるるうへは、成人の頼朝をば助けて、幼き者をばきらんこと、そのいはれ、さかさまなるべし。いひてもいひても、頼朝が死生(ししゃう)によるべし」とぞ、宣ひ (ロ)
  • 兵衛佐が死罪のこと、池殿、やうやうに申され (ハ) ば、死罪ゆるされて、流罪にぞなりにける。

2021年にも同形式の問題が出題されていました。

2014年 この年は、品詞分解!

指示文

略。出典は『古今著聞集』。

設問

問四 二重傍線部(c)「からめさせまゐらせん」を、例にならって品詞分解しなさい。

           動詞・四段・連体形         助動詞・断定・終止形

例 いとなむなり → いとなむ                           なり

本文

(強盗の棟梁の小殿が、源の判官康仲に)「もし万が一、命をいけて、召しもつかはれ候はば、(べち)の奉公には、余党その数おほく候ふを、一々に(c)からめさせまゐらせん」といへば、康仲興ある事に思ひて、うけ取りてつかひけり。

高1,2年生へのヒント!

「まゐる」と「まゐらす」の区別をはっきりさせておきましょう。

丁寧に説明すると、複雑で時間がかかるのでここでは一点だけ、マスターしてください。

「まゐる」……補助動詞の用法はない。

「まゐらす」……補助動詞の用法がある。そして頻出です。

2013年  この年は、文法説明!

指示文

次の文章は、『平家物語』の一節である。三位中将(さんみのちゅうじょう)平重衡(たいらのしげひら)は、源氏との戦いに敗れ、捕えられて都に移送された。重衡に仕える木工右馬允知時(もくうまのじょうともとき)という武士が、捕われの身となった重衡のもとを訪れた。(以下略)

設問

問三 二重傍線部(b)、(c)を、例にならって文法的に説明しなさい。

例 召しつかはれ候ひ → 過去の助動詞の連体形

本文
  • ……この人の声とおぼしくて、「いくらもある人のなかに、三位中将しも生け取りにせられて、大路をわたさ(b)るる事よ。……
  • ……(重衡から思いを寄せる女房への手紙を預かった知時〈右馬允は)(つぼね)下口(しもぐち)辺にたたずんで聞けば、この人(重衡が思いを寄せる女房)の声とおぼしくて、「(中略)げにさとおぼゆる」とかきくどき、さめざめとぞ泣か(c)ける。右馬允、是にも思はれけるものをといとほしう覚えて、「もの申さう」と言へば、「いづくより」と問ひ給ふ。

高1,2年生へのアドバイス!

まずは、助動詞「る」「らる」の意味をはっきり覚えてしまいましょう。現代語の助動詞「れる」「られる」に対応するので、覚えやすい人も多いでしょう。

→「受け身自発可能尊敬

次のルートをたどって、判断します。

①文脈上、直前の動詞に関して「~できる」という可能、もしくは不可能が焦点となっていると解される場合。→可能

②文脈上、直前の動詞に関して「自然と~てしまう」という、意志では制御しにくい心情・行為に焦点が当たっていると解される場合。→自発

【ハイレベル】直前の語が「思ふ」系の動詞であっても、動作主が敬意を払われる人物(貴人、親、神仏など)である場合、尊敬と解釈される点は、最重要事項。

③文脈上、直前の動詞の動作主である主語(←書かれていないことも多い)との主述の関係が、受け身になっていると解される場合→受け身

【ハイレベル】ただし、主語が書かれていない場合に、適切な主語を補う必要があるので難度が高くなる。またその場合、④「尊敬」の解釈との判断が重要になる。

④文脈上、直前の動詞の動作主である主語(←書かれていないことも多い)との関係が、受動ではなく能動であり、その主語が敬意を払われる人物(貴人、親、神仏など)である場合→尊敬

【ハイレベル】③「受け身」同様、主語が書かれていない場合の判定には、一定程度のトレーニングが必要。

解法!(簡単に思う人/面倒な解説は不要と思う人は、スキップしてください)

(b)るる

STEP

「るる」の直前の「(大路を)わたす(+る)」の主語は、遡って接続助詞「て」の直前の「生け取りにせられ(生け捕りにされ)」の主語である「三位中将」と考えられる(接助「て」の前後では主語は変わりにくい、法則)から、三位の中将は生け捕りにさ「れる」側なので、「大路を渡す」側ではなく、大路をわたさ「れる」側と考えられる。

STEP

よって「受け身」。

(c)

STEP

助動詞「れ」の直前の「(さめざめと)泣(か→く)」という動作に着目し、可能「~できる」に焦点が当たっているわけではないこと、他者「X」によって「泣く」という行為がなされる受身と考えることは不自然であることを押さえる。

STEP

となると、自発か尊敬のどちらかになるが、「泣く」という心的行為(自然とついしてしまう、自分の意志では制御しにくいことがある行為)から自発が考えられるものの、続く文脈の会話において、「泣く」の動作主であった「この人(重衡が思いを寄せる人)」の動作「問ふ」に尊敬語がいられて「問ひ給ふ」と敬意を払われていることを根拠として、当該「泣く」の動作主(この人)は敬意を払われる人物(貴人重衡の思い人)であり、尊敬の敬語が用いられる必要のある人物と判断できる。 

STEP

よって、当該「れ」は尊敬の助動詞と結論づけられる。

2012年 この年は、敬語動詞!

指示文

次の文章は、江戸幕府の五代将軍徳川綱吉に仕えた柳沢吉保よしやすの半生を、側室の正親町町子おおぎまちまちこ(一六七六~一七二四)が見聞きしてつづった『松蔭まつかげ日記』の一節である。(以下略)

設問

問二 傍線部①、⑤の敬語の種類敬意の対象をそれぞれ答えなさい。

本文
  • ……御所(※徳川綱吉)には、とりわき驚き思し召して、(※綱吉の長女の鶴姫君を)いみじう心もとながり聞こえさせ給へれど、限りあればいといぶせく、わりなきことと思すべし。
  • ……(※綱吉は長女の鶴姫君の容態のことを)日頃もいと頼みなきさまにのみ聞き奉らせ給へど、なほいかにいかにと思しわたりつるを、いまはと思しなしたる御心の(やみ)思ひやるべし。

解法!

まずは、本動詞と補助動詞の区別、次にそれぞれにおいて尊敬語か謙譲語かを判断できることが前提となります。

 

STEP

直前の本動詞「心もとながる」に下接する「聞こえ」は、謙譲の補助動詞です。従って「心もとながる」という動作(心情)の客体(受け手)を敬うことになります。

STEP

この本文では、「綱吉」が「長女の鶴姫君」を心配したという文脈になるので、「心もとながる(=心配する)」の受け手、「鶴姫君」が敬意の対象となります。

 

STEP

直前の語が引用の格助詞「と」なので「思しなし」は本動詞、かつ「思ひなす」の尊敬語です(「おぼす」は「おもふ」に対する尊敬語なのです)。従って、敬意の対象は「思ひなす(=決め込む)」の動作主となります。

STEP

そこでこの文脈では、綱吉が鶴姫君をもう御臨終だとお思いになっていると解釈され、綱吉が敬意の対象となります。

※イメージです。

解答

2022年度

問六       b な   c に   d ぬ

2021年度

問四       a ける             b ける             c けれ

2020年度

問二       (a) られ           (b) らる           (c) らるれ       (d) らるる

2019年度

問二       (a) ハ  (b) ロ  (c) ホ

2018年度

問一 亡す、()、聞しめしつく    

2017年度

問二       (a) ホ  (b) へ  (c) ロ  (d) ニ

2016年度

問二 おはす、おぼしめす、まします、召す

2015年度

問二       (イ) ける           (ロ) ける           (ハ) けれ

2014年度

問四       からめ…動詞・下二段・未然形     させ…助動詞・使役・連用形

    まゐらせ…動詞・下二段・未然形 ん…助動詞・意志・終止形

2013年度

問三       (b) 受身の助動詞の連体形          (c) 尊敬の助動詞の連用形

2012年度

問二       ① 謙譲語、鶴姫君         ⑤ 尊敬語、綱吉

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